平成17年(行ケ)第10670号 特許取消決定取消請求事件
主文
1 特許庁が異議2002-71913号事件について平成17年7月20日にした決定を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文第1項と同旨
第2 争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯等
(1) 原告は,発明の名称を「生体内分解型高分子重合物」とする特許第3254449号(平成3年4月11日(優先権主張・平成2年4月13日)にした特許出願(特願平3-79328号)を分割して平成12年11月24日出願,平成13年11月22日設定登録,請求項の数6。以下「本件特許」という。)の特許権者である。
(2)ア 本件特許について梅田敏之及び岡幹男から特許異議の申立てがされたため,特許庁は,これを異議2002-71913号事件として審理し,その係属中の平成14年12月27日,原告は,本件特許に係る明細書の訂正を請求した。
特許庁は,審理の結果,平成17年7月20日,上記訂正は認められないとした上で,「特許第3254449号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし,その謄本は,同年8月8日,原告に送達された。
イ なお,本件決定は,請求項1ないし3に係る発明は,刊行物1(「Polymer」, 1979, Vol20, December, P1459-1464, 『Biodegradablepolymers for use in surgery-polyglycolic/poly(actic acid) homo-and copolymers:1』。甲1)に記載された発明であるから,特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができず,請求項4ないし6に係る発明は,刊行物1及び刊行物2(特開昭62-54760号公報。甲2)に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたから,同条2項の規定により特許を受けることができないとしたものである。
(3) そこで,原告は,本件決定の取消しを求める本件訴訟を提起し,その係属中の平成17年10月14日,本件特許に係る明細書について,特許請求の範囲の減縮等を目的として,請求項1の訂正等(以下「本件訂正」という。)を内容とする訂正審判請求をした。
特許庁は,これを訂正2005-39186号事件として審理した結果,平成18年6月6日,本件訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,その謄本は,同月16日,原告に送達された。
2 設定登録時の請求項
【請求項1】分子量1,000以下の低分子重合物の含有量が3.0(%)未満である生体内分解型脂肪族ポリエステル。
【請求項2】分子量1,000以下の低分子重合物を含有する生体内分解性脂肪族ポリエステルを水易溶性有機溶媒に溶解し,これに水を加え高分子物質を析出させて,分子量1,000以下の低分子重合物を除去することにより得られる請求項1記載の生体内分解型脂肪族ポリエステル。
【請求項3】水易溶性有機溶媒100に対して水を50~150(容量比)加える請求項2記載の生体内分解型脂肪族ポリエステル。
【請求項4】請求項1記載の生体内分解型ポリエステルを放出制御物質とする薬物含有製剤。
【請求項5】薬物が黄体形成ホルモン放出ホルモン,甲状腺ホルモン放出ホルモンもしくはその塩またはその誘導体である請求項4記載の製剤。
【請求項6】薬物が酢酸リュープロレリンである請求項4記載の製剤。
3 本件訂正後の請求項(判決注・下線部は訂正部分)
【請求項1】分子量1,000以下の低分子重合物の含有量が3.0(%)未満である生体内分解型脂肪族ポリエステルであって,当該生体内分解型脂肪族ポリエステルは,ポリ乳酸または乳酸とグリコール酸との共重合体であり,その組成比が,乳酸100~50モル%,残りがグリコール酸である,生体内分解型脂肪族ポリエステル。
【請求項2】分子量1,000以下の低分子重合物を含有する生体内分解性脂肪族ポリエステルを水易溶性有機溶媒に溶解し,これに水を加え高分子物質を析出させて,分子量1,000以下の低分子重合物を除去することにより得られる請求項1記載の生体内分解型脂肪族ポリエステル。
【請求項3】水易溶性有機溶媒100に対して水を50~150(容量比)加える請求項2記載の生体内分解型脂肪族ポリエステル。
【請求項4】請求項1記載の生体内分解型ポリエステルを放出制御物質とする薬物含有製剤。
【請求項5】薬物が黄体形成ホルモン放出ホルモン,甲状腺ホルモン放出ホルモンもしくはその塩またはその誘導体である請求項4記載の製剤。
【請求項6】薬物が酢酸リュープロレリンである請求項4記載の製剤。
当裁判所の判断
1 前記争いのない事実によれば,原告は,本件訴訟の係属中に,本件特許について特許請求の範囲の減縮を含む訂正審判請求をし,特許庁は本件訂正を認める本件訂正審決をし,これが確定したことにより,特許請求の範囲が減縮されたことが認められる。
そうすると,本件決定は,結果として,判断の対象となるべき請求項1ないし6に係る発明の要旨の認定を誤ったことになり,この誤りが決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。
したがって,本件決定は,取消しを免れない。
2 以上によれば,原告の本訴請求は理由があるから,これを認容することとし,訴訟費用については,本件訴訟の経過にかんがみ,これを原告に負担させるのを相当と認め,主文のとおり判決する。